稲の天気対策と畑で見る所
穀類・生育期 6段階・天気の条件 15件・病害虫 7件
水稲(稲)が天気で受けやすい影響を、生育期ごとに「こういう天気が続いたら → 起きやすいこと → 見に行く所」の順で並べています。
気象からは「環境」「水分」「生育フェーズ」の段を主に判断する。土壌の還元状態(Eh)・pH・EC・施肥設計・根圏の状態は気象からは推定に留まり、現地確認・測定が必要。育苗期はハウス(育苗箱)で行うことが多く、施設内環境(加温・換気)が支配的で外気象は参考値。移植後は露地の湛水管理が基本で、外気象の影響を直接受ける。陸稲は湛水がなく気象(降雨)の影響をより直接受ける。
生育の基準温度(積算温度の計算に使う下限):約10℃(一般的目安。品種・地域・作型で要補正)
育苗期
出芽・育苗期に低温(目安15℃前後を下回る日)が続く
低温
- 起きやすいこと
- 出芽遅れ・苗の生育停滞、苗質低下につながりやすい条件。
- 見に行く所
- 苗の生育揃い、葉色の薄まり、苗立ちの遅れの有無。
- 露地と施設
- 育苗はハウス(育苗箱)で行うことが多く、加温の有無で影響が大きく変わる。露地での直播・育苗は外気温に直接左右される。
- 確かさ
- 一般的知見。品種・育苗方式(保温資材の有無等)で差がある。
ハウス内育苗で日中高温・強日射が続く一方、換気が不足する
高温・猛暑
- 起きやすいこと
- 徒長・苗質低下(軟弱徒長)につながりやすい条件。
- 見に行く所
- 苗丈の伸びすぎ、葉色の薄まり、茎の太さ(充実度)。
- 露地と施設
- 施設は換気管理の有無で差が大きい。露地育苗は天候に依存する。
- 確かさ
- 一般的知見。
移植(田植え)・活着期
移植後に日最低気温が低い日(目安15℃前後を下回る)が続く
- 起きやすいこと
- 活着遅れ・初期生育の停滞につながりやすい条件。
- 見に行く所
- 新葉の展開が止まっていないか、葉色、株の傾き。
- 露地と施設
- 露地の湛水管理が基本。低温が見込まれる時期は水深を保つ(深水)ことで保温効果が期待できるとされるが、実施の要否は現地の生育状況で判断する。
- 確かさ
- 一般的知見。品種の耐冷性・移植時期で差がある。
移植直後に強風が続く
強風・台風
- 起きやすいこと
- 苗の浮き上がり・倒伏(浮き苗)につながりやすい条件。
- 見に行く所
- 苗の浮き・傾き、株の欠株。
- 露地と施設
- 露地は風の影響を直接受ける。育苗箱段階(施設)では該当しない。
- 確かさ
- 一般的知見。
分げつ期
分げつ期に低温・日照不足(曇天・長雨)が続く
低温大雨・長雨日照不足
- 起きやすいこと
- 分げつの遅延・数不足につながりやすい条件。
- 見に行く所
- 茎数の増え方、葉色、株の草丈。
- 露地と施設
- 露地栽培のみで、天候の影響を直接受ける。
- 確かさ
- 一般的知見。
強い降雨・連続降雨で水位が高くなり、水深が目安(分げつ期2〜3cm)を超える状態が続く
大雨・長雨
- 起きやすいこと
- 無効分げつ(穂にならない分げつ)が増えやすい条件(AGRIX:深水×分げつ期=注意レベル)。
- 見に行く所
- 田面の水深、茎数と有効茎の見込み。
- 露地と施設
- 露地の水管理に依存。降雨後の排水・落水の可否は圃場条件による。
- 確かさ
- AGRIX AI の知見。水管理は現地の判断が前提で、気象は誘発条件を示すに留まる。
幼穂形成期〜出穂期
出穂期に日平均気温が低い(目安20℃を下回る)日が続く
- 起きやすいこと
- 不稔率が上がりやすい条件(AGRIX:出穂期<20℃で不稔率+10〜30%、18℃未満が3日続くとさらに警戒度が上がる目安)。
- 見に行く所
- 出穂の揃い、籾の充実(不稔籾の有無)、開花時刻帯の気温。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。冷夏・高標高地・早期栽培で影響が出やすい。
- 確かさ
- AGRIX AI の知見。品種の耐冷性・出穂時期のずれで差が大きい。気象は不稔の誘発条件を示すもので確定するものではない。
気温20〜25℃程度で相対湿度90%以上が長時間(目安8時間以上)続く
高湿度・結露
- 起きやすいこと
- いもち病が出やすい条件(AGRIX AI の知見)。
- 見に行く所
- 葉・穂の病斑(紡錘形の病斑、穂首の変色)、圃場全体での発生の広がり。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。長雨・曇天・朝霧が続く時期に注意。
- 確かさ
- AGRIX AI の知見。発生を確定するものではなく「出やすい条件」を示すに留まる。品種の抵抗性・栽植密度で差がある。
出穂前10日前後に多湿(高湿度・降雨が続く)状態が続く
大雨・長雨高湿度・結露
- 起きやすいこと
- 稲こうじ病が出やすい条件(AGRIX AI の知見)。
- 見に行く所
- 出穂後の穂における異常な塊(緑黒色の塊状物)の有無。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。
- 確かさ
- AGRIX AI の知見。発生の確定は現地確認が必要。
気温25〜30℃で相対湿度90%以上の高湿度状態が続く
高湿度・結露
- 起きやすいこと
- 紋枯病が出やすい条件(AGRIX AI の知見)。高窒素圃場では拡大しやすいとされるが、施肥量は気象からは判断できないため現地確認が必要。
- 見に行く所
- 株元〜下位葉鞘の病斑(水浸状〜褐色の斑紋)、株間の込み具合(通風)。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。
- 確かさ
- AGRIX AI の知見。窒素施肥量・栽植密度との組み合わせで発生リスクが変わるため、気象単独では判断できない。
登熟期
登熟期に日中の高温(目安33℃以上)が5日程度連続する
高温・猛暑
- 起きやすいこと
- 白未熟粒(充実不足で白濁した粒)の発生率が上がりやすい条件(AGRIX AI の知見)。
- 見に行く所
- 籾の充実、収穫サンプルでの白未熟粒の見た目。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。
- 確かさ
- AGRIX AI の知見。品種の耐暑性・登熟期のタイミングで差がある。
登熟期に35℃以上の高温が3日程度連続する
高温・猛暑
- 起きやすいこと
- 乳白粒(心白・腹白)が増えやすい条件(AGRIX AI の知見)。水管理として水深を深めにする(目安5cm)対応が知られているが、実施は現地の圃場条件・水利状況で判断する。
- 見に行く所
- 籾の充実、日中の葉のしおれ、水口・水尻の水温差。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。
- 確かさ
- AGRIX AI の知見。水管理の実施可否は圃場ごとに判断が必要。
出穂期〜登熟期に強風・大雨(台風等)が重なる
大雨・長雨強風・台風
- 起きやすいこと
- 倒伏につながりやすい条件。倒伏後は登熟阻害・穂発芽のリスクも高まる。
- 見に行く所
- 株の傾き・倒伏の有無、倒伏後の穂の状態(濡れ・発芽の兆候)。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。
- 確かさ
- 一般的知見。ケイ酸供給状況・窒素過多・品種の稈長で倒れやすさが変わるが、これらは気象からは判断できず現地確認が必要。
収穫期
収穫期に連続降雨が続く
大雨・長雨
- 起きやすいこと
- 収穫適期(目安:籾水分20〜25%)の判断が難しくなり、刈り遅れによる胴割れ粒の増加(乾燥しすぎ・急激な乾湿変動で起きやすいとされる)や、倒伏・穂発芽のリスクが高まりやすい条件。
- 見に行く所
- 籾水分(可能であれば測定)、倒伏の有無、穂発芽の兆候。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。
- 確かさ
- 一般的知見・AGRIX AI の知見。品種・地域の刈り取り基準で差がある。
収穫前に強風(台風等)が来る
強風・台風
- 起きやすいこと
- 倒伏・収穫作業の遅延につながりやすい条件。
- 見に行く所
- 株の倒伏状況、圃場の停滞水の有無。
- 露地と施設
- 露地栽培のみ。
- 確かさ
- 一般的知見。
天気が重なると起きやすいこと
出穂期前後の高温多湿
いもち病・紋枯病・稲こうじ病が出やすい気象条件が同時期に重なりやすい。特に高窒素圃場では紋枯病が急拡大しやすいとされるが、施肥状況は気象からは判断できず現地確認が必要。
出穂期の低温
不稔リスクに直結する。冷夏年・高標高地・早期栽培で特に警戒。
登熟期の高温連続
白未熟粒・乳白粒の発生条件が重なりやすい。水管理(深水対応等)の要否は圃場の水利条件を踏まえて現地で判断する。
強風+多雨(台風)
倒伏・穂発芽・収穫遅延が同時に起きやすい。ケイ酸供給・窒素過多など倒伏助長要因は気象からは判断できず、別途現地確認が必要。
このデータは気象条件から「出やすい状態」を示すもので、病害・生理障害・減収の発生を確定しない。土壌の還元状態(Eh)・pH・EC・施肥設計・根圏の状態は気象からは推定に留まり、現地確認・測定が前提。数値は品種・地域・作型・栽培方式(水稲/陸稲)で補正が必要。防除に触れる場合も、農薬は登録内容を確認のうえ判断すること。
稲の病害虫が出やすい条件
天気の数字は「この範囲で出やすい」という目安です。条件がそろったら、下の「見る所」を畑で確かめてください。
いもち病 病気
- 出やすい条件
- 気温 20〜25℃/湿度 90%以上/葉が濡れている時間 8時間以上/雨が続くと増える
- 時期の目安
- 6〜9月
- 生育の段階
- 分げつ期・幼穂形成期・出穂期
- 作型
- 露地
- 最初に出るサイン
- 葉に紡錘形の病斑が出やすく穂では穂首が変色しやすい。長雨や朝霧後に確認する
- 見る所
- 葉の紡錘形病斑・穂首の変色・朝霧・葉の濡れ
- 被害の重さ
- 重い
- 確かさ
- 高い
- 参考
- 農研機構・各県病害虫防除指針
紋枯病 病気
- 出やすい条件
- 気温 25〜30℃/湿度 90%以上/雨が続くと増える
- 時期の目安
- 7〜9月
- 生育の段階
- 分げつ期・出穂期・登熟期
- 作型
- 露地
- 最初に出るサイン
- 株元から下位葉鞘に水浸状から褐色の斑紋が出やすい。株間の混み具合を見る
- 見る所
- 株元の病斑・下位葉鞘・過繁茂・湿度
- 被害の重さ
- 重い
- 確かさ
- 高い
- 参考
- 農研機構・各県病害虫防除指針
稲こうじ病 病気
- 出やすい条件
- 雨が続くと増える
- 時期の目安
- 7〜9月
- 生育の段階
- 出穂前・出穂期
- 作型
- 露地
- 最初に出るサイン
- 出穂後の穂に緑黒色の塊状物が出やすい。出穂前後の多湿後に穂を確認する
- 見る所
- 穂の塊状物・出穂時期・多湿・圃場履歴
- 被害の重さ
- 中くらい
- 確かさ
- 中くらい
- 参考
- 各県病害虫防除指針
ばか苗病 病気
- 出やすい条件
- 雨との関係は薄い
- 時期の目安
- 3〜5月
- 生育の段階
- 育苗期・移植期
- 作型
- 露地
- 最初に出るサイン
- 苗が徒長し淡色になりやすい。育苗箱で周囲より伸びた苗を確認する
- 見る所
- 徒長苗・葉色の薄さ・苗箱・種子履歴
- 被害の重さ
- 中くらい
- 確かさ
- 低い
- 参考
- 各県病害虫防除指針
もみ枯細菌病 病気
- 出やすい条件
- 雨が続くと増える
- 時期の目安
- 7〜9月
- 生育の段階
- 出穂期・登熟期
- 作型
- 露地
- 最初に出るサイン
- 籾が褐変し稔実が悪くなりやすい。高温多湿後に穂を確認する
- 見る所
- 籾の褐変・不稔・穂の変色・高温多湿
- 被害の重さ
- 重い
- 確かさ
- 低い
- 参考
- 各県病害虫防除指針
ウンカ類 害虫
- 出やすい条件
- 雨との関係は薄い
- 時期の目安
- 6〜9月
- 生育の段階
- 分げつ期・登熟期
- 作型
- 露地
- 最初に出るサイン
- 株元に虫が集まり坪枯れ状の被害が出ることがある。飛来情報と株元を確認する
- 見る所
- 株元の虫体・坪枯れ・葉色低下・発生予察情報
- 被害の重さ
- 重い
- 確かさ
- 中くらい
- 参考
- 各県病害虫防除所発生予察情報・各県病害虫防除指針
斑点米カメムシ類 害虫
- 出やすい条件
- 雨との関係は薄い
- 時期の目安
- 7〜9月
- 生育の段階
- 出穂期・登熟期
- 作型
- 露地
- 最初に出るサイン
- 穂への吸汁で斑点米につながりやすい。出穂期以降の畦畔と穂を確認する
- 見る所
- 畦畔の虫体・穂の吸汁痕・出穂時期・周辺雑草
- 被害の重さ
- 重い
- 確かさ
- 中くらい
- 参考
- 各県病害虫防除所発生予察情報・各県病害虫防除指針
自分の畑の稲を、今日の天気と写真で見てもらうなら
AGRIX AI は、作物の写真から病気・害虫・生理障害を見分け、地域の天気予報と生育の段階を重ねて「今日なにを見に行くか」を出すアプリです。このページの内容は、アプリが判断に使っているデータの一部です。
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天気から探す
このページについて AGRIX AI に入っている作物の「天気への反応」と「病害虫の出やすい条件」のデータを、そのまま読みやすく並べたものです。数値は一般的な目安で、品種・地域・作型で変わります。病害虫の発生を言い当てるものではなく、「出やすい条件」と「見に行く所」を示しています。
農薬を使うときは、ラベルの登録内容と、お住まいの県の病害虫防除所が出す情報・防除指針に従ってください。
作り方:AGRIX AI のデータ(作物66種の天気への反応・22作物の病害虫の条件)から、プログラムで1作物1ページに並べています。文章や数値は足していません。データを直すと、このページも作り直します。
作成:北島真史(RAIXEN・AGRIX AI 開発)。元専業農家(ブロッコリー4ha・ネギ・ズッキーニほか10年)、農業資材店で土壌診断と肥料・農薬の相談を担当、今は米6ha・ネギの兼業農家。著書『直売所で儲かる心理設計』。